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Piston Clearance.

ブタでもわかると評判の、LWE Nori Blog。

今回はシリンダーについてじゃ。

そもそも、ピストンとシリンダーの間にはどのくらいの隙間があるのじゃろう。

あっ、ホグホグ言うの忘れてた。ホグホグ。

このネタ知ってるヒトは、かなり熱心なHot Bike Japan読者じゃのう。



基本、君たちのハーレーには「鋳造された」、つまりは溶かされ型に流し込まれ形成された、アルミのピストンが入っておる。

これは、熱が入ると膨張する。

それを踏まえた上でのクリアランス(隙間)を取る、と。

ここであまり数字を出すとややこしい事になるので、あくまで簡潔に。

0.05ミリくらい(笑)


弊社のシリンダー・ボアゲージはインチ表記を使用しておりますゆえ、通常2/1000インチ、ということはつまり使用するピストンに対して0.002インチ大きくシリンダーの穴を掘ります。これが、ミリに直せば0.05ミリくらい、という事。


するってーと、暖気完了後に丁度いいクリアランスになる。


ホグホグ。


ちなみにS&SやKB、ワイセコなんかの「鍛造」ピストンは、鋳造と違いギッチギチに密度の濃い塊を削り出して作るので、熱が入った時の膨張率が、鋳造よりも大きい。

という事は、鋳造のピストンと同じクリアランスだと焼き付く、と。

じゃあ、どうして鍛造が良いとか言うの?

その1、鋳造に比べて、鍛造ピストンの方が強度がある。

その2、精度が良い。



そのくらいでしょうか。

対してデメリット。

その1、クリアランスを鋳造よりも多く取る事により、要は暖気が済むまではクリアランス過多。

音が出たり、オイルが上がったり、隙間が多い事によりピストンやシリンダーにダメージを与えたりする。

その2、重い。



さあ、果たしてストリートでの使用で、鍛造ピストンを使う必要があるのでしょうか?ホグ。

鋳造で充分、ですね。


でもって・・・


Piston Clearance._c0210640_06195.jpg

アメリカ帰りのボーリングマシーン。

刃物が回転し、固定されたシリンダーのボアを少しずつ削って行きます。

この時、ダミープレートと呼ばれるものを使い、エンジンが組まれている状態を作ると良いでしょう。

例えばショベルのヘッドボルトは、マニュアル上ではリヤのアクスルシャフト・ナットと同じトルクで締めます。
そんな大きな力で締め付けたら、如何に鉄といえども変形しますよね。

なので、「エンジンが組まれた状態にする」わけです。

それは、語弊があるといけないのですが、つまりは「歪ませる」と言う事。

特に画像のようなエボリューションのシリンダーはアルミですから、さらに変形するわけです。

そのまま掘って、そのまま使用なんて言語道断です。





Piston Clearance._c0210640_01732.jpg

さてさて、シャカシャカとボーリングしてみると、こんな風にシリンダーが減っている事に気づくハズ。

この傷が取れるところまで、地道に少しずつ削ってゆくワケです。

そうしたら、基本ハーレーは0.010インチごとに大きなピストンが用意されているので、使えるサイズを選択した後に、そのサイズより2/1000インチ大きくなるようにする、と。

ここで重要なのが、「ボーリングしたシリンダーには刃物の傷が付いているので、そのまま使えない」という事。

刃物の傷の深さを考えると、「使用するピストンと全く同じ大きさ」に削るに留め、残りの2/1000インチは「ホーニング」で仕上げるのが必須となります。

そのときに、「クロスハッチ」と呼ばれる「砥石によって付けられた網目」を意図的に残し(その深さは車種によって変わる。ナックルよりもエボと言った方向で網目の傷は浅くて良い)エンジンオイルが付着しやすいようにします。


これは、「冷却」「潤滑」「洗浄」という、エンジンオイルの3大使命を果たすために他なりません。

何故ナックルよりもエボの方が浅くて良いのか、わかりましたね??



LWEでは、「自分でバラしてきました」的なプライベーター様から、「ソッコーで上げてください」的な業者様からのご依頼まで、シリンダーのボーリングとホーニングを受け付けております。

スポーツスターの883から1200へのボア・アップなどもご相談くださいませ。

by lwe31x | 2012-08-20 00:38 | Tech
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